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24時間換気はなぜ必要?意外と知られていない冬の住宅結露と24時間換気との関係

こんにちは、気密社長こと寺澤 悟です。

24時間換気と聞いて「住宅についてるよ!」という方、「それ何?」という方もいらっしゃるでしょう。知っている方は平成15年以降に住宅を新築された方か建築確認が必要なリフォーム工事を行った方かと思います。

平成15年(2003年)以前は設置の義務がありませんので、築年数が約20年以上のお家にお住まいの方は知らなくても問題ありません。平成15年以降の新築住宅で24時間換気が付いていないという方は、お建てになられた工務店やハウスメーカーにご確認ください。

今回は、24時間換気の重要性についてお伝えしたいと思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。

24時間換気の設置の義務化及び内容について

そもそも、なぜ24時間換気は義務化になったのか皆さんはご存じでしょうか。

住宅の断熱化や建築現場において接着剤を使用した建材や家具が多く使われるようになり、家具や建材から放出されるホルムアルデヒドなどの有害成分によってシックハウス症候群という病気になる人が増加しました。

シックハウス症候群とは

近年、住宅の高気密化などが進むに従って、建材等から発生する化学物質などによる室内空気汚染等と、それによる健康影響が指摘され、「シックハウス症候群」と呼ばれています。その症状は、目がチカチカする、鼻水、のどの乾燥、吐き気、頭痛、湿疹など人によってさまざまです。

シックハウス対策のページ(厚生労働省)

住む人の健康を守るため、有害物質を適切に排出し人体に影響が出ないレベルまで濃度を低下させるために平成15年より24時間換気の設置が義務化されました。

法律では1時間で0.5回、2時間で1回、住宅の中の空気を入れ替える換気設備が必要となりました。

しかし、設置はしてあっても機能していない24時間換気があるのも事実です。24時間換気がどのように機能するのが正しいのかお話ししたいと思います。

なぜ24時間換気が機能しないの?機能しないとどうなる?

そもそも建築確認では「空気の出入口と排出するためのファンモーターの能力が1時間あたり、どれくらいの量を排出し、室内の空気を2時間で入れ替える」といったレベルしか求められていません。

実際は、入口の穴の圧損(圧力損失)や建具の隙間の抵抗などがあり、1時間で何㎥排出の能力には抵抗が一切ないファンを通過する空気の量であり、建物によっては換気量が少なかったり、多かったりします。

換気量が少ないのは健康上の問題があるのはもちろんですが、換気量が多すぎるのも冷暖房でせっかく温めたたり、冷やしたりした空気を捨てるのですから問題ありますよね。

本来機能していなければならないはずの24時間換気ですが「冬は寒くなるので止めています」という家主さんや「冬、寒かったらこのスイッチで止めて下さい」という住宅会社の話もよく聞きます。

24時間換気のスイッチを止めることで結露が起きたり、カビが生えやすくなったり、最悪の場合は健康上の問題も発生しますので決して止めないでください。

このような状況で本当に住む方の健康と省エネの両立は叶うでしょうか?

もちろん住んでいる方は素人ですし、換気自体はファンが動いている程度しか確認できないですよね。見えないからこそ、なかなか皆さん吟味しないんですよ。

「熱を交換するタイプは省エネですよ!」とは言ったものの空気が全て器械を通ればこそ、実際半分しか器械を通っていなかったらどうでしょう?

  • 家の中にカビが生える
  • 暖房をしていても24時間換気を回すと寒くていられない
  • 冬、窓ガラスに結露が起きる
  • シックハウス症候群になる

上記すべて、換気だけが原因というものはありませんが、換気に半分位原因があるならば24時間換気は相当吟味しないといけないと私は思いますが、みなさんはどうお考えになりますか?

良い24時間換気とは

良い24時間換気の話をしていきたいところですが、良い24時間換気を機能させるためには前提条件があり、この条件が整わないと24時間換気は意味のないものになってしまいます。下記の表と図をご覧ください。

この条件とは気密性能の事です。気密が良ければ良いほど、換気計画に近い計画の実現が可能となります。

当社で採用しているジョイ・コス住宅システムのC値最低基準0.5c㎡/㎡でも、給気口から入ってくる割合が87.3%です。なので気密隊のメンバー(ジョイ・コス住宅システムを取り扱う全国の工務店)はC値0.1c㎡/㎡以下を目指して施工をしています。気密がもたらす住宅性能は別の機会に紹介しますので割愛します。

それでは、上記をクリアしているという前提でC値が0c㎡/㎡で換気計画をしていきます。気密が悪いと計画したところから空気が入ってこない実験動画をご覧ください。

換気の計画

当社で採用している換気システムはレンジフード以外をダクト式の三種換気または一種換気です。当社で採用率の高い第三種換気を例に計画をしたいと思います。

排気口(排気レジスタ)の数

先ほども言いましたが、レンジフード以外はトイレやお風呂も個別の換気扇は設置せずに24時間換気システムで24時間換気をします。

台所・トイレ・浴室・各個室の収納内部に排気口を設けます。必要な排気量を計算し、各排気口の排気量を決定します。台所、トイレ、浴室等のニオイの強い場所は通常より多く排気するように設計し、他のお部屋含め2時間で1回空気が入れ替わるように排気を設計します。

給気口の数

次に給気口の数を決めます。第三種換気の場合は排気口にのみファンなどの機械を設置し排気の圧力を使って、給気口から外の新鮮な空気を室内に取り込みます。

一カ所あたりの給気量(㎥)を25㎥から20㎥の間に設定したいので次のような計算をします。

例)床面積132㎡(40坪) 天井高2.4m 気積316.8㎥

1時間で半分換気なので、給気口1か所から室内入る量が25㎥の場合は 316.8㎥÷2÷25㎥=6.33個。

20㎥の場合は 316.8㎥÷2÷20㎥=7.92個。

この計算で給気口が6か所の場合、1箇所から25㎥以上の空気が入ってくること、そして給気口が8個だと20㎥以下しか入ってこないことが分かります。よって給気口は7個設置することとなります。

317.86㎥÷2÷7個=22.71㎥となり、下の図面の通りの流れで、2時間ですっかり入れ替わります。

設置場所は各居室に1個以上、リビングなどの広いスペースには2個以上設置する場合もあります。実際には隙間0の家は存在しませんので、少し多めに計画します。

なぜ25㎥以下20㎥以上なのか

空気の動きを人肌で感じられないギリギリのラインが25㎥とされています。給気口から25㎥以上の空気が入ってくると、流れる空気のスピードが15㎝/秒以上(1秒間に15㎝のスピード)となり、人肌で空気が動いているのを感じてしまいます。

また、20㎥以下になると建物の内外の温度差や外部の風の圧力により室内への給気できなくなる可能性があるため、20㎥以上に設計します。

これが何を示すかというと、2時間で316.8㎥をきっちりと調整して排気出来る換気でなければならないということです。

このように計画することで、外から取り入れた新鮮な空気は戻る事なく矢印のように進んで、ホルムアルデヒドなどの有害物質やニオイ、私たちの呼吸で出るCO2など汚れた空気と入れ替わります。

国内で生産されている換気設備で、このように排気量の調整をできる器械を私は見たことがありません。が、国内で販売されているものはありますのでご安心ください。

私たちジョイ・コス住宅システムで採用している換気以外を使うとなると、気流を感じて不快に思ったり、必要以上の換気で無駄にエネルギーを捨ててしまったり、換気不足による健康被害が出る可能性があるということです。

どのように計画通りの換気を実現するのか 

計画図面に沿って施工し、住宅が完成したら換気の調整を行います。この調整こそがその家に合わせて換気ができる秘密です。

計画した㎥数が浴室やトイレなどその場所で何㎥排気されているか測定ができ、尚且つ、排気量を調整できる仕組みになっています。これで排気量をきっちりと調整できます。

意外と簡単な調整なのですが機能的に備わっていない換気がほとんどであり、それらの換気設備がついいている住宅は私たちから見れば何らかの不具合のある換気と言わざるを得ません。

機能しない換気を使っている業者は「建築確認で要求されていないので必要ない」と言いますが、本当に必要ないでしょうか?

私たちは必要ないものをお客様に提供しているのでしょうか?ここまで読まれた方はお分かりですよね。こんな換気が必要だと。

さらに余談ですが、この建物は6人で生活した場合にCO2の濃度が1000ppm程度を維持します。この換気扇を私たちが調整すると建築確認で要求されている換気をきっちりするほかに、生活する人数に合わせてCO2濃度を1000ppm以下に保つように調整します。

内覧会ではCO2センサーを置いて、皆さんの目で確認していただいております。

コロナウイルス感染症で店舗の換気の目安でCO2センサーを置いて1000ppmを超えたら換気で窓を開ける店舗も多いですが、自宅が1000ppm超えないってちょっといいですよね。

CO2の濃度も高くなると人体に悪影響ですが、通常の生活で悪影響が出るくらいになるには余程の状況です。

長時間過ごす空間のCO2の濃度が1000ppm以下が望ましいとされており、24時間換気もきっちり換気できていれば、おおむねそのようなCO2の濃度になっています。

まとめ

ここまでの説明で、24時間換気の必要性をご理解いただけたかと思います。

冬の結露の原因に換気が関係しているのは、結露のメカニズム(詳しくはこちら)は決まっていて換気をしなければ結露の条件を満たす可能性が高くなるため、半分は換気の責任です。

隙間が多い住宅は奇跡的に目に見えているところは結露しない場合がありますが、見えないところで結露している可能性は高く、気密性能・断熱性能の高い住宅ほど換気が機能していないと、断熱性能の低い部位(サッシなど)で結露します。

各居室の温度差が大きくなると、換気が機能していても温度の低いお部屋の断熱性能の低い部位で結露が発生してしまいます。

よって換気のみが原因ではありませんが、換気が機能しないと結露します。

また、カビは水・エサ・所定の温度があればどこにでも生えます。一度生えて環境が持続するとどんどん増えます。

カビは温度20℃~30℃、湿度70%以上を好み、エサはホコリ、ごみなど。住宅の中にはエサになりそうなものがいっぱいありますよね。

条件がそろえば、一年中生えます。カビを抑えるには、3つの条件の中の1つ以上を絶つとカビは繁殖できません。

冬などの寒い時期は換気が機能していれば、湿度が高くなることはないので、問題ないのですが、梅雨から真夏にかけて外の湿度は70%以上になりますので、その空気が家の中に入ってくるとカビの発生条件が整ってしまいます。

エアコン等で湿度コントロールしないとカビの発生は避けられません。外の湿度が下がっても換気が機能しなければ室内の湿度が下がらないので、カビの発生を防ぐことはできません。

熱交換換気は省エネ性が高い商品ですが、隙間が大きいと第三種換気と変わらないくらいのエネルギーロスを引き起こします。一種換気はファンの使用電力が三種換気の倍であり、同じ隙間性能でも、三種換気より隙間から逃げるエネルギーが性質上大きくなりますので、設備機器の性能だけでは健康で省エネに暮らせる住宅にはなりません。詳しくは気密性能のブログでご紹介いたします。

省エネで健康に暮らすためには24時間換気は大切なものですが、24時間換気だけでなく、断熱、気密、施工がとても大事です。断熱、気密、施工に関するブログもアップ予定ですのでそちらも是非ご覧ください。